完璧主義から肩の力の抜けた人へ
世代の近い人、離れた人。施設のいろんなところを案内してくれながら、そこで同僚に会えば笑って言葉を交わす。
池の平ホテル&リゾーツで働く疋田健さんは、穏やかで気さくに笑う姿が印象的な人です。
そんな今の様子からはあまり想像できませんが、実は疋田さんはかつては完璧主義的で、仕事でもプレッシャーに苦しみながら働いていたと振り返ります。
「ここに来て肩の力が抜けた」。疋田さんはそう感じているそうです。
希望の会社で抱えたプレッシャー
「新卒のころは、『仕事ってこういうもの』『キャリアアップはこんなふうじゃないとダメ』って固定観念があったんです。就活のときも『上場企業で、平均年収はこれくらいで』っていろんなデータで決めていっていました」(疋田さん)
そんな言葉どおり、疋田さんは大学卒業後、新卒で首都圏の大手メーカーに入社。大学時代に取った簿記の資格を活かして、経理部門で働いていました。
イメージ通りのキャリアに進んだ疋田さんでしたが、仕事や生活が楽しいかというとそうでもなかったといいます。
経理というミスの許されない仕事に、完璧主義的な性格が重なり、楽しんで働くというより、「ミスをしたらまずい」というプレッシャーがいつもある感覚でした。
「僕自身も初めての社会人生活でしたからね。不安や苦労を気軽に話せる人がいたらまた違ってたのかもしれないですが、そのときの会社は勤務時間中はみんな黙々と働く雰囲気で、部署に同世代もいなかった。うまく気を抜けるところがなかったんでしょうね」(疋田さん)
やがてプレッシャーに疲れた疋田さんは、新卒で入った会社を退職。違う環境を探すことにしました。
気分転換のつもりで向かった白樺湖
改めて転職先を探しはじめた疋田さん。とはいえ、以前のように経理の仕事をする気持ちにもなれず、転職先のイメージもなかなか固まりませんでした。そんなとき目にとまったのがリゾートエリアでのバイトでした。
「最初は単純に気分転換くらいの気持ちでした(笑)。転職もなかなかうまくいっていなかったし、少しどこかで働いて慣らすような感覚で」(疋田さん)
リゾートエリアでは繁忙期になると泊まり込みで働く人を募集することも多く、1か月前後現地で暮らしながら働くことができます。高原エリアにある池の平ホテル&リゾーツもそんなひとつです。
池の平ホテル&リゾーツは、ホテルを中心に遊園地やプール、展望スポットに冬はスキー場など、白樺湖周辺でさまざまな施設を運営する会社。それだけでなく、白樺湖がまだ人のいない森だったころから開拓を進めて地域をつくり上げた存在でもあります。
高原のリゾートエリアということで、夏などのハイシーズンには、会社の寮に住んで1か月ほど働けるアルバイト募集もあります。
たまたま見つけたその求人に、疋田さんは応募しました。
自分の固定観念を壊してくれた職場
あくまで短期バイトとして池の平ホテル&リゾーツにやってきた疋田さんですが、そこで働きはじめると思ってもみなかった気持ちの変化がありました。
「みんな和気あいあいと自然に話したり笑ったりしながら働いているんです。しかも、上司や部下といった関係や年齢の差があっても気軽に。『こんなふうにも働けるんだ』って、ちょっとしたカルチャーショックでした」(疋田さん)
働く人もさまざま。大学生もいれば、アルバイトをしながら自由に生きる人に出会うこともある。働く理由やスタイルも多様で、いろいろな生き方を見ることができました。
「それまでは仕事で出会う人も社内の人がほとんど。たまに社外の人と会ってもメーカーや銀行の人ばかりでした。だから、『仕事はスーツ』『キャリアはこう』って固定観念があったんです。でも、ここに来ていろんな人に会ったことでもっといろんな働き方や生き方もできるんだって気づいたんです」(疋田さん)
ちゃんと働くけれど、いろいろな人と気兼ねなく話せる。そんな職場の雰囲気に惹かれた疋田さんは、短期バイトだった予定を延長。そのまま池の平ホテルで働き続けることを決めました。
「会社もそのときちょうど、そのまま働いてくれる人を探してるって聞いて、だったら働きたいって思ったんです」(疋田さん)
それから10年。バイトから正社員になった疋田さんは、さまざまな部署を経験し、現在予約センターのリーダーとして働いています。
やれることが増えていくのが楽しさになった
思ってもみなかった転職は、新しい仕事の面白さも教えてくれました。さまざまな施設があり、地域とも密接な池の平ホテル&リゾーツでは担当部署や仕事もさまざま。疋田さんもボーリング場の受付からフロント、予約センターでの業務などいろんなところを経験しました。
「初めての仕事で、自分がやれることが増えていくのが面白かったですね。最近では除雪なんかもできるようになりました」(疋田さん)
冬は雪が積もる白樺湖では、大雪のときは除雪車や重機が必要になります。そんなときの対応のため、会社負担で除雪車の免許を取る機会があり、疋田さんも免許を取得しました。
白樺湖を庭にして遊ぶ子どもたち
高原のリゾートエリアで暮らすことは、プライベートでも新しい楽しさをくれました。
「ここにいると、遊びに行く予定がない日も楽しいんです。何をしようかなって考えながらふらっと湖畔をブラブラするだけでも気持ちいい。ちょっと時間があるときには白樺湖の周りを走ったりもします」(疋田さん)
楽しめるのは周囲の自然などだけではありません。池の平ホテル&リゾーツでは社員は施設を無料で使うことができます。
会社の施設を使って仲のいい同僚とバーベキューしたりすることも。働く場所が遊ぶ場所、友人と出会う場所にもなっているといえます。
また、結婚して子どもが生まれてからは子育ての環境としても魅力を感じるようになりました。
「会社に託児所があって、子どもが小さいときは本当に助かりました。しかも、少し大きくなってからは白樺湖にある施設が遊び場にもなってるんです」(疋田さん)
白樺湖はもともと自然豊かなリゾートエリア。芝生の生えた湖畔のエリアで過ごしたり、遊び回る場所に囲まれています。さらに、社員の子どもも池の平ホテル&リゾーツの施設を無料で使えるのも魅力のひとつです。
「遊園地や動物園にいつでも入れるから、休みの日に何度も遊びに行っています。子どものお気に入りは動物園ですね。小さいですけど、馬やカピバラ、ヤマアラシなどいろんな動物がいるんです。動物って何度も会いたくなるから、今もよく遊びに行っています」(疋田さん)
働く人も癒やすリゾート
最初は軽い気持ちでやってきた白樺湖は、疋田さんにとっていろいろな人と新しい仕事観、人生観に出会わせてくれた場所になりました。
「新卒のときは若かったのも大きかったですけど、やっぱり固定観念も多かった。今ももちろん仕事である以上大変なことはありますけど、いろんな人に出会って、いろんな経験ができたことで、視野が広がったと思います」(疋田さん)
遊びに来た人にとって心安らぐリゾート地は、働く人にとっても発見と魅力がある場所なのかもしれません。