八ヶ岳Work&Life

40歳になったとき、「あのときこうしていれば」と思いたくはなかった。

山田泉さん

2021年10月 TINY GARDEN 蓼科異動

大阪の友だちにも「本当に楽しそうにしてるね」って言われます

蓼科湖の湖畔に佇むロッジ・キャビン・キャンプの3種類の宿泊施設を持つ施設、TINY GARDEN 蓼科。そこで、同僚はもちろん、宅配のおじさんにも「こんにちは!」と声をかけて世間話に花を咲かせるのが山田泉さんです。その姿はもうずっと前からここにいる人のようですが、実は茅野に移住してまだ1年足らずだといいます。

出身は大阪。移住はもちろん、ひとり暮らしも茅野にやってきて初めてだったといいますが、違和感はまったくなかったといいます。

「何もかもが楽しい。ホームシックになったこともないです。大阪の友だちにも『本当に楽しそうにしてるね』『移住してよかったね』って言われます(笑)。大阪が合っていなかったってことは全然ないんですけどね。仕事帰りに好きな飲み屋さんで飲んで、そこで知り合いもできてって感じで楽しく過ごしていました。でも、40歳の自分を想像したとき、大阪にいるイメージが出てこなかったんです」(山田さん)

誰かと対面する仕事が自分には合っている

山田さんのキャリアはずっと大阪でした。仕事はいつも好きなこと。デザイン系の専門学校を卒業したあと、アパレルで働きながらイラストの仕事を。その後、専業のイラストレーターとして5年ほど過ごしたあと、寄せ植え園芸などを中心にしたショップへ転職します。

その経験から転職したのが、TINY GARDEN 蓼科を運営するアパレルブランド・アーバンリサーチでした。アーバンリサーチは服はもちろん、アパレル以外にもさまざまなブランドを持っており、そのひとつに植物があります。山田さんは切り花と植物を扱うショップで1年半ほど働いた後、インターネットで花を販売する担当としてウェブサイトを運営する部署へ異動しました。

「ずっと好きなこと、興味があることを仕事にしているんですが、職種自体は大きく変わっているので、毎回イチから勉強ですね。大変なんですけど、新しいことを知っていくのが楽しいんです」(山田さん)

思い切りよく新しいところにも飛び込んでいく山田さん。ウェブサイトで花を売ることにも可能性を感じていたといいますが、あるときふと自分と自分の将来のことを考えたのが大きな転機になりました。

「自分が本当にやりたいこと、向いていることって何だろうって考えたとき、デスクワークの人間じゃないなって思ったんです。人と直接対面する仕事の方が絶対に合っていると思ったんです。ちょうど同じタイミングでさっき話した『40歳の時の自分』についても考えていて。都会で暮らす生活をいつまで続けるんだろう、いつまでやりたいのかな、40歳になったとき、今の生活で自分は満足してるのかなって。何を選んでも後悔ってあると思うんですけど、40歳になったときに『あのときこうしていればよかった』って思いたくなかったんです」(山田さん)

人生で一番動いた1年間

自分の中でいろいろな思いが重なって、自然の中にあるTINY GARDEN 蓼科への異動願いを出すことに。

「いずれは自然の中で暮らしたい、自給自足みたいな生活がしたいという憧れがあったんです。異動しないかという誘いがあったりしたわけではないのでできるかわからなかったんですが、とりあえず希望を出して、うまくいかなかったらそれはそのときだし、うまくいったら『進め』ってことなんだろうなって」(山田さん)

自然の中で暮らす、人と対面する仕事をする。そんな未来像から希望したTINY GARDEN 蓼科でしたが、茅野、蓼科という場所についてよく知っているわけでもありませんでした。

「アウトドアが好きで、スノーボードなんかもやるので、長野県に滑りに来ることはあったんですが、TINY GARDEN 蓼科に来たこともなかったし、最初は『なんか遠いところ』くらいのイメージでした(笑)。キャンプ場だよね?ってくらいの。でも、TINY GARDEN 蓼科の立ち上げに参加した社員に話を聞いたり、SNSで発信しているのを見て『行ってみたいな』って」(山田さん)

結果的に、異動は決まりました。それも山田さんが想像しているよりずっと早く。

「あっという間でした。本当にたまたまの巡り合わせなんですが、希望を出してから1週間くらいで会社から『じゃあ異動する?』って言われたんです。まさかそんなに早く希望が通ると思っていなかったし、さすがに少し時間をおきましたが、それでも3か月くらいで一気に異動することになったんです。それまでの仕事の引き継ぎをして、引っ越しをして……この1年は人生で一番動いたと思います(笑)」(山田さん)

TINY GARDEN 蓼科という人をつなぐハブ

あっという間に決まった移住と新しい職場。特に都市部である大阪から地方のリゾートエリアへ、となるとかなりガラッと生活が変わりそうですが、山田さんはまったく戸惑わなかったといいます。

「大阪からすると田舎ってことになるんでしょうけど、私は田舎だって感じないんですよね。蓼科から20分もくだっていけば市街地ですし、蓼科もいろんなお店がある。私自身、大阪でもちょっと田舎の方の出身だったので、地元とそんなに違いを感じないんです。冬の寒さにはびっくりしましたけど(笑)。水道管が凍っちゃったり」(山田さん)

知り合いのいない、まったく知らない土地に馴染むというのも、移住のとき多くの人が不安を感じる点ですが、そこも山田さんは自然に馴染んでいったといいます。

「TINY GARDEN 蓼科という受け皿があったので、ここにいると自然に馴染んでいくんです。知り合いもできるし」(山田さん)

TINY GARDEN 蓼科は、もともと人をつなげるハブのような役割を持つこともコンセプトになっている施設。働く人も移住してきた人もいれば、地元の人もいる。やってくる人も遠方からの観光客もいれば、地元の人が遊びに来ることもある。地元のクラフトビールブルワー・8 Peaks BREWINGとコラボして、参加者といっしょにオリジナルビールをつくるイベントなど、地域のいろんな人とやってくる人をつなげる活動も盛んです。

山田さんの明るく気さくな性格ももちろんあるでしょうが、TINY GARDEN 蓼科自体が地域とのつながりをつくりやすい場所でもあるというわけです。

市民農園で育てた野菜がまかないにも

終始楽しそうに話す山田さん、移住してもっともよかったと感じることを聞いてみると「もう全部です(笑)」という答えが。

「どれって決められないです。そもそもこんなに自然を感じながら働けるところ、都会には絶対ないじゃないですか」(山田さん)

ここに来て新しくはじめたことも。畑もそのひとつです。

「20代のころから興味はあったんです。ここに来て、同僚がいっしょに市民農園をやらないかって誘ってくれて、すぐにはじめました」(山田さん)

茅野市には遊休農地を利用した市民農園があり、4月中旬から11月下旬にかけて100平方メートルほどの区画を借りることができます。山田さんは移住1年目の今年、さっそく14品目ほどの野菜を育てています。

初めての畑だとわからないことも多いものですが、TINY GARDEN 蓼科では同僚に加え、関わりのある農家さんもおり、折に触れていろいろと聞くこともできます。

隣接する原村で農業をしている種to菜園もそんなひとつ。種からこだわり、積極的に自家採種を行う無農薬・有機の農家さんで、TINY GARDEN 蓼科ではフードロス削減の一環として、ここから規格外の野菜などを仕入れています。ときには畑にお邪魔して収穫をお手伝いすることも。そんななかでプロの話を聞くのも楽しみだといいます。

そんなふうにして育てた野菜は、初年度からどっさり。食べきれないほど収穫したときはまかないに使われたりもするそうです。

「植物って本当に奥が深い。切り花の仕事をしていたときにも仕事のなかで自然と勉強することになって、どんどん興味が湧いていったんです。今は環境との関わりなんかの話を聞くこともあって、そういう点でも考えることが多いです。農業って必要不可欠なものだけど、メタンガスとかそういう副産物もすごく多い。SDGsまでいくと範囲がすごく広くなりますが、環境問題を日本はどう解決していくんだろうな、とか」(山田さん)

日々の全てが輝いている

移住を楽しんでいるのは、実は山田さんだけではありません。実家の家族も、山田さんの移住をきっかけに楽しみの幅が広がっています。

「もともと父や兄弟もアウトドア好きなんですが、私がこっちに来たから気軽に遊びに来るようになって。みんなでスノーボードなんかに来るようになりました。夏は姪っ子甥っ子といっしょに畑に行ったりして。そんなの、私がこっちに住んでいなかったらできないこと。そういう経験をさせてあげることもできるのが本当にうれしいですね。最近は親にも『早く(蓼科に)家を建てろ』って言われてるんです(笑)。ゆっくり遊びに来たいから」(山田さん)

ここでの日々、全部が輝いている。山田さんはそんなふうに話します。でも、その話しぶりや人柄に触れると、この場所が輝いているのではなく、山田さん自身が自分のいる場所を照らして輝かせているように感じました。

COMPANY INFO 山田泉さんの働いている会社

株式会社 アーバンリサーチ TINY GARDEN 蓼科

海でもなく山でもなく、湖へ。暮らすように過ごす、自然と境界が溶けていく。新宿から車で、電車で2時間半。海でもなく山でもなく、湖へ。標高1250m、澄みきった空気と白樺の木々に囲まれた小さな庭で日常と非日常が交差する時間を。

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