八ヶ岳Work&Life

同じ思いを持った仲間をいい形で巻き込んでいける。今まで以上にワクワクしています。

長谷川大地さん

2020年6月入社

ロープを使って木をケアするスペシャリスト

見上げるほどの高い木に、ロープ1本でスルスルと登っていく青年。ものの数分もかからず梢近くまで行くと、「こんな感じで仕事してます」と笑顔で話してくれたのが、木葉社で働く長谷川大地さんです。

木葉社は長野県茅野市で樹木の手入れや整備をしている会社。森を背景に、重機の入れない狭い場所の木などをケアしています。

入社2年目の長谷川さんは、その現場で樹木のスペシャリスト「アーボリスト」のひとりとして活躍しています。

「当たり前」を次の世代にもつなぎたい

長谷川さんは茨城県出身。大学卒業後は茨城県内で働いていました。

「大学時代、就活をするころになって改めて考えてみると、自分が本当にやりたいことって何もないなって思ったんです。それで卒業後に海外を旅してみたんですが、そこで自分には人からお金をもらえるような技術がないことに気づいた」(長谷川さん)

ただ、おぼろげながら人に伝えたいことはありました。

「自分が楽しいと思うことや、きれいだと感じるもの、好きだという感情、感動を次の世代にも味わってもらえるようにしたい、つないでいきたいという思いはずっとありました。森や自然はそのひとつですよね。美しい景色を守るというだけじゃなく、森って生活ともずっとつながってきたものじゃないですか。採取や狩猟の場でもあったし、もっといえば地球そのものの環境のバランスを整えてもいる。そういうものがあるからこそ、僕らは生きていられるし、いろいろな感動も生まれる。当たり前のように感じているけど、ちゃんとつないでいこうとしないと失われてしまうものでもある」(長谷川さん)

次の世代につないでいくことをしたいという思いもあって、長谷川さんはいろんな仕事を経験しました。

最初は環境関連のNPO法人に就職し、森での伐採や木のケアなどにも触れます。そこで林業や木の剪定を行う造園業の技術に惹かれ、転職。さらに技術を磨いていきました。

仕事をしながらいろいろなものに興味を持ち、掘り下げていく長谷川さんでしたが、一方で深いところでスタッフ同士がつながり合う感覚は、なかなか感じられていなかったと振り返ります。

「僕は中学時代からずっと音楽もやっていたんですが、音楽って言葉にできないようなことも共有できるんです。バンドのメンバーとも、海外で出会った音楽家の人たちとも、同じ思いを共有できる感覚があった。だけど、仕事ではなかなかそういう深い部分でつながる関係になれなくて。もちろんいっしょに仕事はできるし、いろいろなことを教えてもらったんですが、どこかで『10年後、20年後も同じ方向を向いていられるかな?』っていう疑問を感じてたんです」(長谷川さん)

そんなときに出会ったのが木葉社でした。

林業を手段として考える会社

木葉社に興味を持ったきっかけは、ツリークライミングという技術との出会いでした。ツリークライミングはヨーロッパ・アメリカで生まれた技術。ロープなどを使って木に登り、安全に高い木の枝を伐ったり、整備するために確立されたものです。

ロープと身体があれば、重機が入れないような森や狭い場所でも作業ができるツリークライミングは、長谷川さんに驚きを与えました。この技術をもっと学びたいと思った長谷川さんは、国内でもアーボリカルチャー(樹木業)が盛んな長野県で仕事を探しはじめ、木葉社の求人に出会いました。

早速面接に行った長谷川さんを待っていたのは、これまで勤めた企業とは違った雰囲気の会社でした。

「最初に目に付いたのは事務所にずらっと並んだ本です。林業の会社って本があっても技術や資格に関するものくらいというイメージだったんですが、木葉社の本棚って物生化学とか歴史学、社会学、美学、民俗学の本や写真集、小説、映画のDVDなんかもあるんです」(長谷川さん)

木葉社の本棚に並ぶのは、芸術大学出身の小池社長をはじめ、メンバーたちが興味を持った本。直接仕事に関わるものに限らず、さまざまなジャンルの本が並んでいます。

「小池社長やメンバーの頭のなかが見えるような本棚だと思ったんです。ただ木を伐って、ケアするだけじゃなくて、歴史や社会を踏まえて、森をどうしていくべきかっていうのを考えて仕事をしているのが伝わってきた」(長谷川さん)

結果、昼からはじまった面接は、さまざまな話題が広がり、気づくと夜まで話し込んでいました。

「木葉社にとって林業って手段なんです。『森と人がどうやったらいい関係になれるか』『次の世代にどうやってつなげていくか』というのが出発点で、その関係をつくるための手段として林業をやっているという感じ。ここなら同じ思いを共有できるかもしれないと思ったんです」(長谷川さん)

怖さがなければ木には登れない

小池社長をはじめとしたメンバーの考えに触れて入社した長谷川さんですが、木葉社は技術面でも魅力がある会社でした。

木葉社でもツリーワークの中核を担うメンバーである小池社長と野澤専務は、国内ではほとんどクライミング用のギアが手に入らなかった時代から海外の技術を学び、ギアなどの輸入もしながら技術を得てきた人たち。そんなパイオニア的な存在によるツリーワークの教え方は、それまでの経験とはまったく違うものでした。

「道具の使い方や木の伐り方そのものはそれまでも教わっていたんですが、木葉社では原理から体系的に知って仕事をしているんです。たとえば、ロープ1本でなぜ上れるのかを物理的に教えてくれる。そうすると、木のどこにどれくらいの負荷がかかって、どうなると折れるのかというのもわかる。道具にしても、なぜその道具を使うのか、別の道具ではダメなのかというのをわかった上で使っている」(長谷川さん)

そうして原理から体系的に知ることで、長谷川さんは木に登るのが怖いと感じるようになったといいます。

「今まではどうして登れるのか、どうなると事故が起こるのかを理解できていないから怖いと思っていなかったんです。でも、ちゃんと理解すると今までの自分がどれくらい危険なことをしていたかがよくわかるようになった。よく死ななかったな、という感じです。今は『怖い』という感覚がなければ危ないし、その感覚なしで木に登っちゃいけないと思うようになりました」(長谷川さん)

お互いの趣味が響き合う関係

木葉社に来てから変わったのは仕事や技術だけではありません。プライベートな活動もここに来てさらに充実したといいます。

たとえば狩猟。茨城にいたころにやりはじめた狩猟は、移住後も続く長谷川さんのライフワークのひとつです。ただ、以前は自分ひとりで追求していた狩猟に、木葉社のメンバーも興味を持ったことでそれまでとは違う広がりが生まれました。

「僕はもともと自分の興味があることはひとりで追求していくタイプなんですけど、木葉社の人たちってそういう個人的な部分にもすごく興味を持って大事にしてくれるんです。狩猟も、最初は僕から誘うようなことはなかったんですけど、メンバーからすると『いつ誘ってくれるんだろう』って待ってたようで(笑)。それで、解体の仕方や皮のなめし方を教えたりするようになったんですが、それを知ったらみんな自分たちの持っている技術と掛け合わせて、いろいろなものをつくれるんじゃないかって盛り上がっていったんです」(長谷川さん)

木葉社にはツリーケアに関する技術だけでなく、それぞれが趣味などで培った技術を持った人が集まっています。

たとえば、立ち上げメンバーのひとりである野澤さんはツリーワークの中心であると同時に、染め物の技術を持っており、個人で個展を開いた経験もある人です。そんな野澤さんが狩猟素材と出会ったことで、革を染めることにも興味を持ちました。長谷川さんの個人的な関心が、ここでは会社の人たちを巻き込んで広がっていったのです。

そんな広がりの象徴ともいえるのが、長谷川さんの誕生日に贈られたナイフとシース(鞘)です。このシースは長谷川さんが獲った鹿の毛皮をメンバーが加工して仕上げたものでした。さらに、ナイフの柄には、木葉社のメンバーが伐採した材をシースの風合いとマッチングするように独自の技術で加工して取り付けています。木葉社のメンバーと長谷川さんが出会ったことで生まれた誕生日プレゼントは、仕事を超えたつながりを感じるものでした。

セッションするように仕事も広がる

そんなふうにメンバー同士が影響し合う関係が、木葉社では仕事にも発展しています。

たとえば、木葉社が扱うブランド「yaso -ヤソ-」。植物の枝・葉・実を標本にしたインテリアである「yaso BOX」をはじめ、赤松のお茶、お香など、より多くの人に森を身近に感じてもらいたいという願いのもと、山の資源を活用した商品開発をしています。

この「yaso BOX」も、花尾さんというメンバーの個人的な収集趣味から生まれたものでした。花尾さんは自分が気に入ったものをとにかく集めて貯め込むタイプ。仕事でも森や山に入るたび、気になった落ち葉や剪定した枝などを集め、保存していました。

花尾さん自身は集めたものを飾ったり、加工したりするわけではなかったのですが、彼の集めた森のカケラを見たデザイナーが興味を抱き、「yaso BOX」という商品を生み出しました。

長谷川さんは、そんなメンバー同士の関係をバンドのセッションのようだと表現します。

「お互いに影響し合ってひとつの音楽が生まれるみたいに、それぞれの個性があることで新しいものが生まれていく関係なんですよね。そうやって仲間といっしょに仕事をしたり、何かをつくっていく面白さがわかるようになりました。だから、いい形で仲間を巻き込んでいけたらいいなって思っています」(長谷川さん)

「ここならもっと面白いことができる」。長谷川さんは今、そんなことを感じています。

COMPANY INFO 長谷川大地さんの働いている会社

株式会社 木葉社

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